七年目の熱情【10】   ―君となら― (一成視点)


一成は自分の下で喘ぐ直哉の姿を見つめながら、その滑らかな肌の感触を楽しんだ。
直哉はどうやら感じやすい体質らしく、少しの愛撫にでも反応を返し、一成を飽きさせない。
最奥に埋めた指を故意に引っ掻くと、直哉の体はびくんと跳ね上がった。
散々慣らして濡れそぼったそこは、くちゅりと卑猥な音をたてる。
「ん・・・あぁ・・・、一成もう・・・」
熱い吐息を漏らしながらも、必死で言葉を紡ぐ。
「ん?なんだって?」
「や、もういや・・・だ」
「直哉は嘘つきだな。・・・ここをこんなにしてよくそんなことを言うね。本当はどうしてほしいか、言ってごらん」
直哉の一番感じる部分を刺激すると、甲高い悲鳴のような声を上げた。
直哉の中心にあるそそり立ったものからは、先走りの液がとろりと垂れていて、今にもイキそうに震えている。
必死で堪えているが、かなり辛いだろう。
「ほら、言ったら楽にしてあげるよ」
指を三本に増やし愛撫を続けるが、直哉はときたま喘ぎ声を漏らすだけで一向に口を開こうとはしない。
「・・・強情だな。ちゃんと言わないと、私には伝わらないよ?」
「んっ。な・・んで。・・・・オレのこと、・・・弟だって、言ったくせに・・・っ」
一成は目を瞠った。
この状態でまだそんなことを言えるとは―。
(そんなに私に弟扱いされたことが気になっていたのか―)
なんとも単純で分かりやすい直哉の言動に愛しさがこみ上げる。
直哉は快感に体を撃ち震わせながらも、強い眼差しで一成を見上げた。
「一成は、弟相手に・・・こ、こんなことするのかよっ」
「・・・そうだね。あの言葉は撤回しよう。―きみだから、私はこんなことをするんだよ」
この言葉が直哉にとってどれほど重要か、一成は知っていて囁いた。
「・・・オレ、だから?」
驚きに瞳を見開く表情は、ひどく幼く一成の目に映った。
「そうだよ。だから素直に今、自分がどうされたいのか言ってみなさい」
甘い声で促すと、直哉は観念したように口を開いた。
「一成のを・・・、い、入れて・・・っ」
羞恥で顔を真っ赤にして、半ば叫ぶようにお願いをする。
そんな直哉が愛しくて、更に意地悪な言葉を続ける。
「入れて、それでどうしてほしい?」
「なっ・・・」
一成は直哉の双丘の間に自分の猛ったものをつるりと滑り込ませる。
そのままゆっくりと時間をかけて腰を進めると、その質量と熱に直哉が苦しそうに胸を上下させる。
一成は全部を埋め込ませると、軽く吐息をついた。
直哉の中は熱く締め付けてきて、心地よかった。
「さあ。直哉の希望通り、全部入ったよ」
いつまで経っても動こうとしない一成に、直哉は落ち着かないようにゆらゆらと腰を揺らし始める。
本人が自覚してやっていることでないことは見ていれば分かった。
無意識にみせる悩ましげな肢体に、一成は己の欲望が更に熱くなるのを感じた。
「こんなふうに腰を揺らして・・・いやらしいな。ほら、このままじゃ嫌なんだろう?」
ぐい、と軽く腰を回すと直哉は嬌声をあげた。
「あっ・・・!う、動いて・・・いっぱい、突いて」
「よくできました」
褒美だと口唇にキスを落とすと、直哉に突き立てたものをぐいっと一気に引き抜いた。
ぎりぎりのところまで出して、また入れる。
いくらかそれを繰り返すと、直哉は両腕で一成にしがみ付き自分の終わりがくることを告げた。
「あ、もうイク・・・っ」
「もう少し我慢しなさい」
張り詰めた直哉自身の根元をぎゅっと指でせき止める。
「やっ!一成っ、手離して・・・っ」
直哉はいやいやと首を振った。
一成は直哉の言葉を聞き入れず、その状態のままで更に腰を激しく動かした。
直哉の喘ぎ声と、結合部から漏れる濡れた音が室内に響き渡る。
「も、やだっ・・、あぁっ・・・」
強すぎる快感はもう苦痛でしかなく、直哉は与えられる刺激に耐え切れずに涙を流した。
「かわいいよ、直哉・・・」
頬を伝う涙に舌を這わせ甘く囁くが、きっと我をなくしている直哉の元には届いていないだろう。
一際大きく突き上げ、ようやく戒めていた手を解くと、直哉は快感の証を一成の掌へと吐き出した。


「なんでオレのこと、抱いたんだ・・・?」
問いかける声は緊張のせいかひどく震えていた。
シーツから覗く肌には赤い鬱血がところどころに見られ、瞼は泣いたせいで腫れている。
誰が見ても先ほどまでなにが行われていたのかが分かるだろう。
一成は吸っていた煙草を灰皿へと押し付けた。
「その前に・・・直哉が私のことをどう思っているのか知りたいな」
さらりと指通りのいい直哉の髪の毛に手を差し込む。
「オレ・・・?」
いきなり質問を返されたことに多少の戸惑いを感じさせる。
それでもここまできたら後戻りはできないと思ったのか、直哉は意志の強そうな眼でまっすぐと一成を見つめた。
「オレは・・・ずっと前から、一成のことが好きだった」
凛と透き通った声だった。
「それは、私にこういうことをされてもいいという意味で?」
こういうこと、という部分でさりげなく胸を撫でる。
情事のあとで敏感になっている肌を触れられ、直哉は小さく肩を揺らしながら、それでもはっきりと肯定した。
「さっきみたいに私に意地悪く抱かれても、気持ちよかった?」
「そ、それは・・・恥ずかしかったし、辛かったけど・・・。でもオレ、久しぶりに会って、やっぱり一成がいないとだめだって分かって・・・」
抱かれ、ひどいことをされてもなお好きだと言う直哉に、愛しさが募る。
「それはずっと私の側にいたいと、そういう意味かな?」
「・・・うん、そうだよ」
「本当だね?一生、側から離れないと誓える?」
「え?ちょっと待って。それってどういう意味・・・?」
突然の一成の問いかけに真意が分からず、直哉は困惑する。
「直哉が私のものになると誓うのだったら・・・私は、この先きみだけをずっと愛してあげるよ」
「・・・ほんとうに?」
本心を見抜こうとまっすぐ自分を見つめてくる直哉に、一成はその言葉が嘘でないことを証明するように、真摯な表情を浮かべて頷いた。
「ああ。本当だよ」
考えるように押し黙ったままの直哉は、しばらくして両腕を一成の首に巻きつけると、口唇に自らのそれを押し当てる。
まるでそれが答えだとでもいうように。
「ずっと、一成の側にいるから・・・だから」
―オレを愛して。
決定的な言葉に一成は心が満たされていくのを感じた。
やっと直哉が自分の手の中に落ちてきたのだ。
「いい子だ。私の直哉、愛しているよ」
ゆっくりと口唇を重ね合わせると、おずおずと直哉は舌を絡めて応えてきた。
「うん・・・。一成、オレも好き・・・」
「今日は無理をさせたから、もう少し眠ってなさい」
背中を優しく撫でてやると、数分もたたないうちに直哉は首に抱きついたまま、吐息を立て始めた。
チュッと額にキスを落とすと、そっとベッドへと寝かせた。
「言葉どおり一生、離さないからね」
一成は自分の思い通りに手に入った恋人に、満足げな笑みを浮かべた。


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