七年目の熱情【6】   ―僕の知らない顔で笑う君― (一成視点)


ベッドの上で枕に抱きつくようにして眠っている直哉。
一成はシャツを身に着けながら、その姿を見て満足そうに微笑む。
情事のときの直哉は、とても可愛らしくそして艶っぽかった。
初めて男を受け入れるのは辛かっただろうに、唇をかみ締めて必死に耐えようとする姿は健気で、一成の嗜虐心を煽った。
だが、直哉を怯えさせないよう、ひどくしたい衝動を抑えて優しく大事に抱いた。
「さて、これからどうするかな」
口ではそう言いつつも、全ては一成の中で決まっていた。
「ん・・・」
少し身じろぎをし、直哉が目を覚ました。うっすらと開いた瞳はまだ焦点が合っていないようだ。
起き上がろうとするが、軽く呻くと再びベッドへ沈み込んでしまう。
腰と、普段は使わない筋肉を使ったせいで、全身が痛いのだろう。
「無理しないほうがいいよ。もう少し休んでなさい」
ベッドの淵に腰を掛けると、直哉の髪をあやすように優しく撫でる。
直哉は心地よさにうっとりしながら一成を視線だけで見上げた。
「一成・・・」
遠慮がちな声。
「どうした?」
「・・・なんでもない」
弱々しくかぶりを振ると、切なそうに眉を寄せた。
直哉の言わんとしていることは分かっていた。
なんの言葉もなく抱いたのは一成自身だから。
きっと今頃、直哉は自分がどうして抱かれたのか不安で堪らなくなっているだろう。
(でも、ごめんね。直哉)
一成はひどい男だった。
自分の中で存在が大きくなればなるほど、相手のことをひどくしたいという衝動に駆られてしまう。
好きな相手の苦悶する表情が見たいだなんて、自分でも狂っているとしか思えない。
気に入られた相手は、自分でいうのもおかしいが、不運だったと思うしかないだろう。
もっとも、一成がここまで執着しているのは今までに直哉ひとりだけなのだが―。
(でも、君には快楽しか与えないから安心して。うんと可愛がって、私なしではいられない心と身体にしてあげるから)
「・・・一成、どうかした?」
声にふと我に返ると、直哉が少し怯えた瞳をしてこちらを見ていた。
「ああ、ごめん。なんでもないんだ」
即座に、歪められていた口元を直す。
どうやら無意識に、考えていたことが顔に出ていたようだ。
一成はいつもの柔らかな笑顔を浮かべ直すと、口付けを落とした。

それが直哉にとって、どんなに甘く苦しいものか知っていて――。


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